【本日のテーマ】「口が軽い」
今回は、言ってはいけないことまで言ってしまうおしゃべりな人を表すイディオムが登場します。ささっそくポイントをおさらいしてみましょう。
◆日本人が間違えやすいポイント
友人たちが集まり、アンジェラの送別会の準備について話し合っています。招待状をジョンに送るのはもう少し後にしようと提案する外国人男性に対し、外国人女性が理由をたずねると He has a loose tongue. という返事。意味がよくわからなかった日本人は、ジョンの舌がどうかしたのかと聞き返しました。
tongue には「舌」という意味がありますが、実は have a loose tongue は「口が軽い、おしゃべりである」というイディオム。つまり、He has a loose tongue. で「彼(=ジョン)は口が軽いんだ」となります。loose は「締まりのない、ゆるんだ」という形容詞で、「締まりのない舌を持つ → 口が軽い、おしゃべりである」ととらえると、意味をイメージしやすいでしょう。また、loose は「ルーズ」ではなく「ルース」と発音する点も押さえておきたいポイントです。
ちなみに、外国人男性の最後のセリフ I mean he can’t keep secrets は「彼は隠し事ができないってことだよ」という意味。He has a loose tongue. を理解できなかった日本人にわかるように「口が軽い」=「秘密を守れない、隠し事ができない(can’t keep secrets)」というシンプルな表現に言い換えて説明しています。
それでは、have a loose tongue を使った 会話例を確認しましょう。
<例文1>
A: Do you think I should tell the others in my department that I’m planning to quit?
辞めるつもりだって部署の人たちに伝えるべきかな?
B: No, they all have loose tongues. It’ll be all over the office if you do.
いや、彼らはみんな口が軽いよ。もし言ったら、オフィス中に広まるよ。
<例文2>
A: This is confidential, but do you think we should tell Linda?
これは機密だけど、リンダに伝えるべきかな?
B: No, she has a loose tongue. She’ll tell everyone.
いや、彼女は口が軽いんだ。みんなに言うよ。
He has a loose tongue. の類似表現には He has a big mouth. や He’s a blabbermouth. があります。日本語では「ビックマウス」は「大口を叩く(人)」という意味でしばしば使われますが、英語の big mouth にこういった意味はなく、have a big mouth で「口が軽い」というイディオムになります。また、blabbermouth は、動詞 blab(ベラベラしゃべる)から派生した、「口が軽い人、おしゃべりな人」という名詞です。これらはいずれも「秘密を守れず、軽率に話してしまう人」というネガティブなニュアンスを含みます。純粋に「話すことが大好きな人、おしゃべり好きな人」というポジティブな意味合いで使う場合は、 He loves to talk. / He’s talkative. などと表現しましょう。
◆さらに応用TIPS!
「口が軽い」のように、日本語の「口」を使った慣用句は英語でどのように表現するかを確認しましょう。
●口火を切る:break the ice
When giving a presentation, it’s good to first tell a joke to break the ice.
プレゼンをするときは、まずジョークを言って口火を切るといいよ。
*直訳は「氷を砕く」ですが、このイディオムは「(会話や質問などの)口火を切る」、「緊張をほぐす」など、場をなごやかにする意味合いがあります。
●口を閉ざす:keep one’s mouth shut
To avoid confusion, you need to keep your mouth shut.
混乱を避けるために、君は口を閉ざす必要がある。
*keep one’s mouth shut は「口を閉ざす、秘密も守る、黙っている」という意味のイディオムになります。
●口がうまい(人):smooth talker
Tom is good at sales because he’s a smooth talker.
トムは口がうまいのでセールスが得意だ。
*「スムーズによどみなく話す人」という直訳から「口がうまい人」というニュアンスに。You’re such a smooth talker.(君って本当に口がうまいね)は、お世辞を言われたときの返答としても用いられるフレーズです。
●口が硬い:can keep a secret
I can keep a secret, so just tell me the truth.
僕は口が硬いから、本当のことを教えて。
*「秘密を守ることができる」→「口が硬い」ととらえましょう。
漫画イラスト: トーマス・オン・デマンド