【本日のテーマ】「概算」
今回は、ざっくりとした見積もりを依頼するときに使えるフレーズが登場します。さっそく、ポイントをおさらいしてみましょう。
◆日本人が間違えやすいポイント
広告代理店のスタッフは、スタジアム広告を検討中のクライアントを野球場に招いて商談中。動画広告に興味はあるものの、費用面を心配している外国人男性はCould you give me a ballpark figure? とたずねました。これを聞いた日本人男性は figure という単語を「形状、数字」という意味でとらえ、So…you want to know the shape and size of the baseball field?(つまり…野球場の形状やサイズをお知りになりたいということですか?)と論点がずれた質問をしてしまいます。
ballpark figure はそのまま訳すと「野球場の数字、球場の形状」ですが、実は「概算、おおよその金額」という意味の英語表現です。日本ではあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、アメリカでは野球が行われる球場を ballpark といいます。
諸説ありますが、野球のボールはどこに飛んでいくか正確にはわからないが「広い野球場(ballpark)内のどこかには着地する」=「大まかな範囲内におさまる、正確な数値から大きくは外れない」という考えから、ballpark は「野球場」のほかに「概算(の)、大まか(な)、何らかの範囲の付近(の)」という意味合いを持つようになったと言われています。
そこから、ballpark figure は予測されるおおよその金額や大体の数値を指し示す際のイディオムとして使われるようになりました。言い換え表現には rough estimate(大まかな見積もり)や approximation(概算)などがあります。
外国人男性の Could you give me a ballpark figure? というフレーズは「概算を教えていただけますか?」という意味。完全に正確な数字ではなくてもいいのでおおざっぱな見積もりを依頼したいとき使えるフレーズです。
ballpark figureを使った会話例を確認しましょう。
<会話例1>
A: Can you provide a ballpark figure for the project’s budget?
プロジェクトの予算の概算を教えてもらえる?
B: It will be about 100,000 dollars.
約10万ドルです。
<会話例2>
A: How much do you think this trip will cost?
この旅行にはいくらかかると思う?
B: It’s just a ballpark figure, but maybe around 50,000 yen.
ざっとだけど、5万円くらいかな。
<会話例3>
A: How can I help you?
どのようなご用件でしょうか。
B: The air conditioner isn’t working properly. Can you provide a ballpark figure for the repair cost?
エアコンが正常に作動しません。修理費用の目安を教えてください。
◆さらに応用TIPS!
野球にちなんだ慣用表現をご紹介します。
●hit a home run:大成功する、大当たりする
「ホームランを打つ」という文字通りの意味のほかに「大成功する、(商品や企画が)大当たりする」というフレーズとしても使われます。ホームランを打つことは容易ではなく、貴重な得点をチームにもたらすことからも意味を想像しやすいでしょう。
<例文>
ABC hit a home run with the new ad campaign, resulting in a significant increase in sales.
ABC社は新たな広告キャンペーンで大成功をおさめ、売上を大幅に伸ばした。
●play hardball:強硬な態度(手段)を取る、手加減しない
「硬球でプレーする」という直訳が転じて、目的を達成するためには容赦せずに何でもするという意味。
<例文>
Our legal team played hardball to protect our intellectual property rights.
我々の弁護団は知的財産権を守るために強硬手段を取った。
●step up to the plate:積極的に行動する、進んで物事に取り組む
この plate は「皿」ではなく「本塁、ホームベース」を指し、野球中継では「バッターが打席に入る」ときに使われる表現です。打席に立つことは、プレッシャーや困難に立ち向かい、挑戦する姿勢を表すことから「積極的に行動する」という意味のイディオムとして使われています。
<例文>
When we were having trouble with the project, Peter stepped up to the plate and led the team to success.
プロジェクトで問題を抱えていたとき、ピーターは積極的に行動してチームを成功に導いた。
●strike out:失敗する、空振りに終わる
strike out は「三振(させる)」という意味が転じて「(人や計画が)失敗する」ことを表す表現として使われます。
<例文>
We negotiated with a potential client, but we struck out.
見込み客と交渉したが、空振りに終わった。
●throw (…) a curve:(~の)意表を突く、惑わせる
curve は変化球の「カーブ」のこと。バッターにとってカーブは打ちにくい球であることから「カーブを投げる」➝「予期せぬことをして面食らわせる、意外な展開で驚かせる」といったニュアンスの表現に。
<例文>
We expected the competitor to agree, but they threw us a curve.
競合他社が同意すると期待したが、彼らは我々の意表を突いた。
漫画イラスト: トーマス・オン・デマンド